新しいNobleの世界:CosmosからEVM L1へ

NobleがCosmos SDKベースのチェーンからEVM L1への移行を発表。USDNを軸に、決済やFXなど実需を見据えた次のフェーズに入ります。

新しいNobleの世界:CosmosからEVM L1へ
Photo by Timo Wagner on Unsplash
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2025年8月よりNobleアンバサダーを務めており、その立場から公式アナウンスを翻訳しています。
投資助言ではありませんので、投資にあたってはご自身で十分にリスクを評価し、判断してください。

本記事は、2026年1月20日にNoble公式ブログで公開された「A New Noble World」の日本語訳です。


本日、NobleがCosmos SDKベースのブロックチェーンから、スタンドアロンのEVMレイヤー1(L1)へ移行することを発表します。

Nobleは、決済、組み込み型DeFi、エージェント型コマースなど、ステーブルコイン向けアプリケーションのためにゼロから設計された、ステーブルコイン中心のブロックチェーンです。当初は、ステーブルコインやRWAの発行および相互運用性(インターオペラビリティ)を支える中立的な流動性ハブとして設計されましたが、その後急速に発展し、現在ではDeFi、プライバシー、企業向け、決済といった幅広い分野でのパートナーシップのもと、実際のエンドユーザーが利用するステーブルコインアプリケーションを支えるチェーンへと進化しています。

現在、Nobleネットワークは、Cosmosを基盤とした構成から、ステーブルコインアプリケーションに特化して設計された高性能なEVM L1へと移行を進めています。この新しいネットワークも引き続き「Noble」という名称を使用し、メインネットは2026年3月18日にローンチ予定です。

これまでの歩みと、これから

2023年のローンチ以降、Nobleは累計で220億ドルを超える取引量を処理してきました。また、50以上のブロックチェーンにおいて主要な流動性レイヤーとして機能しています。現在、Nobleのエコシステムパートナーは2億5000万ドル以上の資産を発行しており、Nobleは世界全体でおよそ3万人の月間アクティブユーザーを支えています。この3年間で、Nobleは安全かつ効率的にステーブルコイン流動性を提供する存在として、信頼されるブランドへと成長しました。

Nobleの次の成長フェーズでは、これまで私たちが築いてきた高いパフォーマンスとセキュリティを、EVM環境にもたらします。実世界のステーブルコイン・アプリケーションを対象に、1秒未満でのファイナリティを実現することを目指します。新たなEVM L1では、最先端のCommonwareスタックと、機関利用を前提とした実績あるProof of Authority型のバリデーターセットを採用します。

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Commonwareスタック
ブロックチェーンを用途別に最適化された部品の集合体として再設計するための、モジュール型インフラスタック

Noble独自のステーブルコインであるUSDNは、このEVM L1において中核的な役割を担います。開発者は、利回りをプログラムによってユーザーに配分できるようになり、プロトコルは消費者向けの金融機能やリワード、ロイヤルティ施策など、より高度なアプリケーションを構築できるようになります。

これらの機能は、為替(FX)、組み込み型DeFi、エージェント型決済フローといった分野における、ステーブルコイン・ネイティブなアプリケーションの拡大を支える基盤となります。EVM L1のローンチによって、こうしたユースケースが現実のものとなります。これによりNobleは、決済、FX、利回りといった機能が次第にひとつに集約されていく、クリプトにおけるステーブルコインのベースレイヤーとしての位置づけを強めます。

新Noble:EVM L1の設計方針

複数のブロックチェーンおよび分散システムのフレームワークについて、幅広いプロダクト調査を行った結果、EVM L1の基盤としてCommonwareを採用しました。Commonwareは、モダンなブロックチェーンを構築するための、Rustプリミティブをベースにしたオープンソースの構成要素群です。特に、スケーラビリティが求められるステーブルコイン中心のアプリケーションに適した設計となっています。

Noble EVMは、Rustで実装されたEthereumの実行クライアントであるRethによって駆動されます。コンセンサスについては、Simplexが採用されます。これはCommonwareにおけるconsensus::threshold_simplexモジュールとして実装されるものです。Simplexは、トランザクションの順序付けを安全に行うために設計された新しいコンセンサスプロトコルであり、非常に高速に動作する点が特徴です。

EVMへ移行する背景

開発スタックを切り替える理由は比較的シンプルです。

  • Nobleが、安全性、信頼性、そして高いパフォーマンスを備えたグローバルなステーブルコイン基盤として機能するためには、最先端かつ高性能な技術スタックの上に構築されている必要があります。CommonwareとRethの組み合わせは、その要件を満たすものです。
  • 私たちは、ユーザーや開発者がすでに使い慣れている環境で価値を提供したいと考えています。既存のツールやインターフェースをそのまま活用できるEVMは、その点で非常に重要です。
  • Nobleのプロダクト構想は野心的であり、従来のNobleアーキテクチャでは、機能やプロダクトを効率的かつスケーラブルに提供するうえで制約がありました。EVMへの移行は、そうした制約を解消するための判断でもあります。

Noble EVM L1が持つ機能

  • 1秒未満のブロックタイム
    トランザクションは500ミリ秒未満で最終確定します。これにより、入金やスワップといったユーザー操作はほぼ即時に反映され、遅延を感じさせません。
  • パーミッションレスなデプロイ
    ローンチ初日から、開発者は許可を必要とせずにアプリケーションをデプロイできます。
  • 決済専用レーン
    ブロックスペースを用途ごとに分割することで、実世界の決済ユースケースに必要な取引を優先的に処理できるようになります。これにより、開発者は決済用途に最適化されたトランザクション設計が可能になります。

Noble EVM L1で利用可能なアプリケーションとアセット

  • Noble Dollar(USDN)
    Noble EVMは、Nobleの中核アセットであるUSDNの新たな基盤となります。USDNは、米短期国債によって完全に裏付けられたNobleネイティブの利回り付きステーブルコインです。M0を基盤として運用されています。
  • 外国為替(FX)分散型取引所(DEX)
    Nobleチェーンの中核には、米ドルおよびユーロのステーブルコイン間の為替フローをルーティングする、新しいDeFiプロトコルが据えられます。今後は、主要なFXペアへの対応も順次拡大していく予定です。
    Nobleは、トークン発行および取引の主要な場となることを目指しており、その一環としてステーブルコインを用いて通貨リスクのヘッジや取引を可能にする、資本効率の高いFXパーペチュアルの導入も計画しています。
  • 管理型ボールト
    Noble EVM上には、ボールト・コントラクトが展開され、USDNホルダーはHyperEVM上で実行されるPendleの管理戦略を通じて利回りの向上を図ることができます。これによりUSDNの利用範囲が拡大するとともに、PendleのYTおよびPTトークンによって実現されるDeFi利回り構造に向けた初期流動性の供給が促進されます。
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PendleのYT、PTって?
Pendleでは、利回りを生むアセットを元本と利回りに分けて扱います。
・PT(Principal Token):元本トークン
満期時に元のアセットを受け取る権利。利回りは含まれない。
・YT(Yield Token):利回りトークン
利回りだけを受け取る権利。
  • 決済
    Noble EVMは、カード連携型決済、P2P決済、さらに金融機関、企業、小売事業者などに向けてNobleが提供する各種の決済機能において、クリアリングおよび決済を担うチェーンとして機能します。
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クリアリング
「誰が、誰に、いくら支払うのか」を確定させる処理。
クリアリング=計算処理
セトルメント=実際の支払い
  • $NOBLE
    フラッグシップDEXを含むDeFiアプリケーションでは、$NOBLEトークンの流動性がサポートされます。$NOBLEは、ガバナンスと経済的インセンティブの両面を担うアセットとして、プロトコル上の意思決定と、ネットワーク全体におけるステーブルコインの利用を結びつける役割を果たします。

既存のNoble Cosmosチェーンの今後

Nobleの開発チームは、EVM L1への円滑な移行を最優先に進めています。
短期的には既存のCosmos SDKベースのブロックチェーンも引き続きサポートし、長期的にはCosmosチェーンはメンテナンスモードへ移行する計画です。これは、新機能の開発は行わず、必要に応じたセキュリティアップデートのみを提供する状態を指します。

重要な点として、Cosmos上の既存チェーンとのIBC接続は、今後も一切変更されません。Nobleチームは、Nobleの流動性に依存している既存のアプリチェーンのエコシステムに対して、EVM L1ローンチ後もIBCの機能が継続して利用できるよう、確実に維持し、さらに改善していく方針です。

アセットの移行については、サポート対象となる各ステーブルコインごとに、最適な移行パスを提供する仕組みの構築を進めています。これにより、ユーザーはCosmosチェーンからNoble EVM L1へ、シンプルで統一されたUXのもと、資金を容易に移動できます。

一定期間は、Cosmosチェーン上にも流動性やアセットが引き続き存在します。最終的には、ユーザーが無理なくNoble EVM L1へ移行できる環境を整えながら、流動性の中心を段階的にNoble EVMへ集約していくことを目標としています。

まとめ

Nobleは、グローバルに利用できる、スケーラブルで安全かつ高性能なステーブルコイン基盤の提供を目指しています。その実現に向けて、安全で信頼性が高く、高性能なEVM L1へ移行することで、ユーザーや開発者がNoble上でプロダクトを構築し、利用しやすい環境を整えます。

2026年3月18日には、次のフェーズであるEVM L1をローンチする予定です。
このEVM L1は、1秒未満で取引が最終確定するブロックタイムや、パーミッションレスなコントラクトデプロイなど、実用的な基盤機能を備えています。加えて、利回り付きのネイティブ・ステーブルコインや、ステーブルコイン特化DEXといった主要なユースケースも、ローンチ時点からサポートします。これは最終形ではなく、Nobleは今後もエコシステムの拡張を継続していきます。この新たなフェーズを、ユーザーやビルダー、パートナーの皆さまとともに歩んでいけることを楽しみにしています。

Noble情報

Webサイト:https://www.noble.xyz/
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Discord:https://discord.com/invite/noblexyz


きなこ所感

昨年クロアチアで開催されたCosmosの祭典Cosmoverseでは、NobleはCosmos Labsから「Cosmosエコシステム期待の存在」として名前が挙げられていました。あの場の空気を思い出すと、今回のEVM移行は、やはりかなり大きな反響を呼びそうだなと感じます。Noble Cosmosチェーンはメンテナンスモードに入り、流動性も段階的にNoble EVMへ集約していくとのことなので、CosmosとEVMを並行して育てていく、という選択ではなさそうです。

私自身、元Keplrの知人に声をかけてもらい、CosmonautとしてNobleのアンバサダープログラムに参加したこともあり、この発表には正直かなり驚きました。ただ一方で、ステーブルコインは実際に大規模に使われてこそ意味がある、というのも事実です。DeFiの中心地がEVMにある以上、Nobleとしても思い切った舵取りが必要だったのだろうと受け止めています。

EVMエコシステムでは、ステーブルコインを軸にしたインフラの競争は、既にかなり激しくなっています。その中で、Nobleがどのように勝ちにいくのか。今回のEVM L1移行は、Nobleの真価が厳しく問われる戦いの始まりでもあります。