なぜDeFi(分散型金融)なのか? - Andre Cronje
なぜDeFi(分散型金融)が必要で、私たちはそこへ向かって邁進すべきなのか?DeFi界の巨人Andre Cronje氏のコラムの日本語訳です。
Yearn FinanceやFantomの功績で広く知られるAndre Cronje(アンドレ・クロニエ)氏のMedium記事「Why defi?」の日本語訳です。ブログ記事翻訳部分に関するすべての権利は原作者に帰属します。
旧Fantom、現Sonic Labsアーキテクト兼共同設立者。Yearn FinanceやKeep3rV1の創設者でもあり、他にも数多くの有名DeFiプロジェクトに関与してきたすごい人。
DeFiで最も影響力のあるキーオピニオンリーダーのひとりであり、クリプト文脈で「アンドレ」といえば彼を意味する。
本題に入る前に、なぜ金融が必要なのかを考えてみよう。
通貨が存在する以前は、物々交換が行われていた。たとえば、私は鶏を育て、あなたは小麦を育てる。私は鶏を渡し、あなたは小麦を渡す。ある年、私の鶏はうまく育たなかった。だが、私は小麦が必要だ。そこで、「来年はもっと多くの鶏を渡すから」と約束することで、小麦を手に入れる。これは借用証書(IOU:I Owe You)という形だ。そして、もしあなたがもう鶏を必要としなくても、隣人が鶏を欲しがっていれば、その借用証書を別のものと交換できる。つまり、誰もが価値があると認める標準化された借用証書、それが通貨だ。そして最終的に、すべての価値をこの借用証書で計測するようになった。
所持する借用証書が増えてくると、盗まれないか心配になってくる。そこで、借用書を安全に保管できる場所が必要になり、最初の銀行が設立された(当初は教会が借用証書の台帳を管理していた)。
次に、地域で評判の良い人物が牧場を始めるために資金が必要だと教会に相談する。教会は借用証書を貸し付けることに同意するが、借りた分より多く返す必要がある。これが利息だ。また、借用証書を守るため、彼は購入した土地の権利証を担保として差し出す。教会に借用証書を預けている地域住民はこれらに歓迎するだろう。利息によって自分たちの借用証書が増えるからだ。また、評判の良いその男性も、事業を始めるための資金を得られたことに安堵する。
金融の本質は、いつの時代でも、資産を活用し人々に力を与えることにある。しかし、詐欺や犯罪、そして社会の進化により、資金を必要とする人物が「信頼できる人」かどうか判断するのが難しくなった。現代では、すべての人が信用スコアで判断される。これは、その人が良い信用を持つかどうかを示す数値だ。このシステムに初めて参加する人は、信用情報機関の用語で「thin file(薄い信用ファイル)」と呼ばれる。データが不足しているため、融資を受けるのは非常に困難で、仮に受けられたとしても非常に悪い条件となる。また、既存の信用関係が必要とされる場合もある。
ここでDeFiに話が戻ってくる。
DeFiは気にしない。DeFiは信用を評価しない。
すべての人が、システムのルールに基づいて公平に扱われる。このルールは公開されており、誰でも確認できる。伝統的な銀行で住宅ローンを断られたとしても、なぜ断られたか理由は分からないことが多い。しかし、DeFiでローンが拒否された場合、その理由が明確に分かる。
貸出しによる利息(あるいは利回り)は、労働や商品以外では最も純粋な収入源だ。新しい事業を始めるために資金が必要な人もいれば、冬を乗り切るための資金が必要な人もいる。この収入源は無限に拡大可能で、純粋だ。偽のインセンティブや外部要因に依存せず、単純な需要と供給によるビジネスだ。
物々交換の話に戻そう。私は鶏がいて、あなたには小麦がある。現代の相互接続された世界でも物々交換は日常のビジネスの核だが、相手を見つけたり欲しいものを見つけるのが難しいことがある。それで、市場(マーケット)が生まれた。皆が週に一度集まり、商品を売買、交換する場だ。クリプトにおけるAMM(自動マーケットメーカー)は物々交換のプラットフォームであり、マーケットと同じように少額の手数料を支払って商品を売る。AMMの流動性提供者は小額の手数料を受け取る。これもまた純粋な収入源(または利回り)だ。買いたい人と売りたい人がいる限り、無限に拡大可能だ。
DeFiを利用するために、実績のある投資家であることや、ニューヨークに住んでいること、ウォール街で働いていることは求められない。裏での不透明な取引や仲介者も存在せず、目に見えるものがそのまま結果となる。
世界の主要産業トップ7を見てみよう:
- 生命保険と健康保険
- 石油とガス
- 不動産
- 年金基金
- 自動車販売
- 直接保険
- 商業銀行
ほとんどの人は参加を許されていないにも関わらず、これらは世界的に最も大きな産業だ。DeFiはこの制限を取り払い、挑戦したい人は誰でも参加できるようにする。これはおそらく、成長する経済にとって最も重要な基盤と言えるだろう。他のすべてはここから派生する。取引と貸出しは、そのすべての中心となる柱である。
確かに、一部にはろくでもないものもある。偽のインセンティブ、不自然に高い利回り、持続不可能な収入など、歪みは存在する。しかし、それらはTradFi(伝統金融)にもDeFiにも共通している。透明で完全に民主化されたアクセスの美しさは、それら自体によって否定できるものではない。
DeFiは分散型社会の基本構造であり、これはまだ始まりに過ぎない。上記7つの産業すべてがオンチェーン化され、誰もが自由にアクセスできる透明でオープンな状態になるまで、やるべきことはまだまだある。
すべての人道的な取り組みは、私たち全体が共有できるだけの余裕を持つときに初めて実現する。そして、その「共有できる余裕」は、DeFiによってのみ可能になる。
あとがき
クリプトの有名人にはお金儲けを追求するタイプと、思想や技術を追求する変人(悪口ではない)タイプがいますが、Andreさんは後者の感じがヒシヒシします。好きなタイプやわ〜。
旧FantomはMultichainエクスプロイトで大打撃を受けてしまったけど、めげずに頑張ってほしいですね。全世界のAndreファンが応援しています。