Proof of Liquidity:ポイントのその先へ

ただのマーケティングが派手なクマじゃない。BerachainはProof of Liquidityで流動性移動の課題を解決し、持続可能なエコシステムを目指しています。

Proof of Liquidity:ポイントのその先へ
Photo by Erik Karits on Unsplash

Berachainの開発エバンジェリストであるCamila Ramos(@camiinthisthang)さんによる公式ブログ記事「Proof of Liquidity: Points, but better」の日本語訳です。ブログ記事翻訳部分すべての権利は原作者に帰属します。


長期的視点でのチャレンジ

流動性は、オンチェーン活動の生命線です。ここ最近のサイクルではでは、流動性を獲得するための短期的なアプローチがいくつも見られました。その多くはポイントや助成金を中心に展開されました。そうして集めた流動性がエコシステム内で効果的に活用されることもありますが、多くの場合、CEXの上場基準を満たしたり、一時的にオンチェーン活動を活発化させることで、トークン価格を押し上げる狙いにとどまっています。この業界は傭兵的な行動や短期的なインセンティブ設計に支配されています。Berachainは、長く持続するエコシステムを築くためには、初めから長期的視点を重視する必要があると考えています。

最近のTGE(トークン生成イベント)は、流動性を提供する側とそれに報酬で報いる側の一方的な関係を浮き彫りにしています。この問題は、特に最近のLRT(流動性リワードトークン)ローンチで顕著に見られるものです。プロトコルは流動性をロックし、それによって利益を得た上で、流動性プロバイダにどのように報いるかを決定します。ユーザーの不満を「エアドロップ狙いのハンターの仕業」として片付けるチームがいる一方で、預けられた資金をプライベートな資金調達やパートナーシップ構築に活用しているにもかかわらず、ユーザーに適切な補償を提供できていない現状を問題視するチームもあります。

ユーザーを怒らせ、世間の評価を損なうこと(ほとんどの場合、価格の変動につながる)に加えて、現在主流の手法で特に問題なのは、ローンチ後に傭兵的なユーザーが資金を引き出し、次のファーミング先に流動性を移してしまうことです。新しいプロトコルが登場すると、ユーザーが新たな価値を求めて急いで移動するため、既存のエコシステムから流動性が吸い上げられます。この現象はしばしば「New Coin Good, Old Coin Bad(新しいコインは良く、古いコインは悪い)」と表現されます。流動性やユーザーを長期的に確保できるプロトコルはほとんどありません。なぜなら、報酬を得られないまま資本をロックしておくことによる機会損失が非常に大きいからです。LRTのような報酬型の流動性確保メカニズムは短期的にユーザーを獲得するには優れていますが、ユーザーを長く定着させるには極めて不向きです。

では、この問題にどう取り組めばよいのでしょうか?
Berachainは、この課題を2つの重要な側面から捉えています。

  1. ユーザーや流動性プロバイダに柔軟性とエコシステムへの影響力を最大限に与え、プロトコルから離れる動機を減らすこと。
  2. ユーザー、アプリケーション、バリデータが一体となり、それぞれがチェーン上で費やした労力や資本に応じた正当な利益を得られる仕組みを構築すること。

ここで「Proof of Liquidity(PoL)」の出番です。

BerachainのPoLは、流動性をより流動的(リキッド)にし、ネットワーク全体の価値の流れを再編成することで、エコシステムに最も貢献している当事者たちが真に報われる仕組みを実現します。

Proof of Liquidity(PoL)入門

PoLは、エコシステムに貢献する資金にインセンティブを与え、Berachainのガバナンストークン$BGTで報酬を提供する仕組みです。このPoLにおいて、3つの主要なステークホルダーがどのように関与するのか簡単に説明します。

バリデータ

  • 委任されたBGTの量に応じてブロック報酬を獲得。
  • 「インセンティブ」を通じ、$BGTの排出量(エミッション)をアプリケーションの報酬プール(Vaults)に割り当てることで、アプリケーションのトークンを受け取ることができる。

アプリケーション

  • バリデータマーケットプレイスで、$BGT報酬を条件としたバウンティ(報奨金)を設定する。これにより、バリデータが$BGTエミッションを自分たちのVaultsに向けるようインセンティブを与える。通常、この報酬はアプリケーション独自のネイティブトークンで提供される。
  • アプリケーションとバリデータは協力して、アプリケーションのトークンやそのエコシステム自体の流動性を立ち上げ(ブートストラップ)る。

ユーザー

  • 対象となる流動性提供先(流動性プールやVaults)に流動性を供給することで、LP手数料と$BGTを得る。また、$BGTをバリデータに委任(デリゲート)することで、そのバリデータがアプリケーションから受け取るアプリケーション独自のネイティブトークン報酬の一部を得ることも可能。

PoLでは、ユーザーは資金をロックする代わりにエコシステムに提供し、ブロック報酬として$BGTを獲得します。この$BGTはバリデータにデリゲートすることが可能です。バリデータはデリゲートされた$BGTが多いほどブロック報酬や手数料収入が増えるため、より多くのデリゲートを得る工夫を行います。

その結果、ユーザーを惹きつけるためのさまざまな取り組みが生まれます。例えば、コミュニティ形成やインキュベーションを通じた「社会的」な価値の提供や、収益の一部を分配する「経済的」なインセンティブなどが挙げられます。

より多くの$BGTをデリゲートされることで、バリデータは先述のバウンティマーケットプレイスを通じて、さらに多くのプロトコルと連携することができます。これにより、新たな収益源を得ると同時に、チェーン上の新しいdAppが流動性やユーザーベースを構築するのを支援できます。

一方で、ユーザーは自分にとって利益が一致するバリデータを選ぶ傾向があります。たとえば、ユーザーがプロトコルXに投資している場合、そのプロトコルに関連するVaultsや流動性プールにエミッションの一部を割り当てるバリデータにデリゲートすることを選ぶ可能性が高いでしょう。

ステークホルダーたちの行動戦略

バリデータ

  • より多くの$BGTのデリゲートを受け、プロトコルの流動性バウンティを処理して収益を上げる。
  • アプリケーションとの効率的な連携が利益を生み出すカギとなる。

アプリケーション

  • バリデータと協力して流動性を深める。
  • $BGTのエミッションを直接ユーザーにインセンティブとして提供し、従来の流動性マイニングプログラムよりも資本効率を向上させる。

ユーザー

  • 自身が利用するアプリケーションに流動性を提供し、利益が一致するバリデータに$BGTエミッションを委任する。
  • インセンティブを得ながら投資リターンを最大化する。

Berachainはこれまで「無限に広がる経済ゲームのための遊び場」として知られてきました。

しかし、ここで紹介した仕組みによって、Berachainは「経済ゲームが無限に展開される遊び場」へと進化を遂げます。同じようでいて、まったく異なる場所になるのです。

PoLはポイントの改良版

トークンがプロトコルで得られる手数料収益をキャッシュフローとして持つことは、クリプトエコシステムにおける最大級の進化をもたらすでしょう。しかし、ほとんどのトークンがそうなっていない理由は、証券と誤解されるリスクを恐れているからです。

Viktor Bunin 🛡️ (@ViktorBuninMay 20, 2024

なぜポイントが「短期的」には機能するのでしょうか?

  • ポイントは、トークンが登場する前に追加の投機手段を提供する(トークンがメインの投機対象となる前の段階で価値を形成)。
  • 一般的に、ポイントは譲渡不可能かつ流動性が低いためマーケットで正確な価格をつけにくい。
  • プロトコルは、ポイントの大部分の価値がすでに(ポイントファーミングによるメトリクス向上を通じて)消費された後になって、それらのポイントがどれだけのトークンに相当するかを後付けで決定できる。

同時に、次のような問題もあります。

  • ユーザーはポイントの配布方法をコントロールできない。
  • ポイントには、対応するトークンの潜在的価値を反映する仕組みや、フロア価値となる基準がない。
  • ポイントの配布期間は不明瞭または非常に変動的で、ある時点での「全体の取り分」を正確に把握することは困難。

もし、プロトコルに最も貢献した人々を、公平かつ体系的に報いる仕組みがあったらどうでしょう?プロトコルが一方的に決定権を握るのではなく、ユーザー自身が資本の機会費用を正しく判断できる透明性の高い仕組みがあれば、より理想的だと思いませんか?

BerachainのProof of Liquidity(PoL)は、従来のポイントの概念を進化させ、さらに洗練された形でその課題を解決します。

PoLは、生産的な資本をエコシステムに提供するユーザーに対して体系的な報酬を与えることで、流動性を「定着」させる仕組みです。これにより、一方的に価値を搾取する「ただ乗り」のような状況を防ぎます。提供された資金は効率的に活用され、流動性が深まり、その結果、ユーザーやdAppにとってより良い取引条件や成果が実現します。

PoLは、バリデータ、アプリケーション、そしてユーザーが相互に連携しながら、Berachainのガバナンストークンである$BGTを通じて経済的・社会的な利益を調整する「ダンス」のような仕組みです。ユーザーは、エコシステム内のアプリケーションに流動性を提供して$BGTを獲得し、保有することで次のような権利を得ます:

  • ネイティブアプリケーションの利用によって生成される手数料の一部を受け取る権利
  • ガバナンスを通じて、どのVaultがインセンティブを受けるべきかを決定する影響力
  • バリデータにデリゲートして、その報酬の一部を受け取る権利

$BGTは、システムに価値を提供したユーザーが「誰が最も報われるべきか」を決定できる仕組みを実現します。

PoLは、エミッションや流動性をより効率的に配分する方法です。リアルなユーザーのオンチェーン活動やプロダクトの成長に基づいており、シビルによるものではありません。また、$BGTはリアルタイムで調整可能で、ユーザー、アプリケーション、バリデータによって管理されます。3者それぞれがゲーム理論に基づく最適な結果を目指して行動を調整します。

さらに、ガバナンスによって新しいプロジェクトが$BGTエミッションを受け取る資格を得られるようになることで、インセンティブが常に変動し続ける仕組みが生まれます。これにより、エコシステムはよりダイナミックで持続可能な成長を実現します。

プロトコルレベルでのインセンティブ調整

クリプトの本質は、インセンティブを調整し、資本を最大化する方法を見つけるゲームといえます。しかし、多くのエコシステムでは、ユーザー、バリデーター、アプリケーションのつながりが分断されているのが実情です。その点、PoLは、アプリケーションがユーザーと流動性を獲得しやすくし、バリデータにはプロトコルとの連携を通じた多様な収益源を提供します。

現在、オンチェーン活動や成長を促進する手段として、最も一般的に使われているのがポイント制度です。この仕組みは、ネットワークに対する行動や流動性の提供に対し、将来的に発行される可能性のあるトークンの価値を見越して報酬を与えるものです。しかし、ポイントの配布や価値は中央集権的な主体によって一方的に決定されるため、短期的な性質を持っています。その結果、流動性が突然失われる「真空状態」や、プロトコルのセキュリティと経済活動の間に不均衡が生じることがあります。このような悪循環は次第に拡大し、新しいユーザーやアプリケーションが参入せず、バリデータの参加も減少していきます。

BerachainのPoLは、この問題に対する根本的な解決策を提供します。この仕組みは、短期的な利益を追求するのではなく、持続可能で長期的な成長に重点を置いています。価値が貢献者に分配される環境を構築することで、プレイヤーが「長期的なゲーム」を楽しむように動機付けられるのです。

Proof of Liquidityの仕組みについてさらに詳しく知りたい方は、ドキュメントをご覧くださいね。


あとがき

Berachainは「Proof of Liquidity(PoL)」という新しい仕組みを通じて、長期的なエコシステムの成長を目指すチェーンです。一見派手なマーケティングが注目を集めがちですが、Berachainが取り組もうとしているのは、DeFi業界で長年解決されてこなかった根深い課題です。

近年、魅力的なインセンティブキャンペーンでユーザーを集め、ローンチやエアドロップ後に活動が停滞し廃墟と化すチェーンが多く見られます。「現在主流の手法における最大の問題は、ローンチ後に傭兵的なユーザーが資金を引き上げ、次のファーミング先へと移動してしまう」とは、まさにエアドロハンターの動きですが、ユーザーにとっては資金効率を重視する当然の行動です。しかし、プロトコルに深刻な影響を与える以上、これを開発サイドが放置するわけにはいきません。

Berachainは、この現状に終止符を打つことを目指しています。現在はテストネットの段階にあるため、興味のある方はぜひFaucetで$BERAを入手し、Berachainエコシステムを体験してみてください。

Berachain情報

Webサイト:https://berachain.com/
ドキュメントサイト:https://docs.berachain.com/
X(Twitter):https://x.com/berachain

翻訳を快諾してくれたCamilaさんに感謝します!