インターネット経済を繋ぐ:WormholeとWトークンの過去・現在・未来
分散化、マルチチェーン、そして収益化。Wormholeが描く「価値のインターネット」の全体像まとめを訳しました。

Wormhole公式ブログ記事「Connecting the Internet Economy: Wormhole and the W Token’s Past, Present, and Future」を訳してみました。
BGMは映画Interstellarのメインテーマをどうぞ。良い映画なのでオススメです。
2025年4月3日、WormholeのWトークンは誕生から1周年を迎えました。これは同時に、プロトコルが完全な分散化へ向けて歩みを続けている証でもあります。Wトークンは3年以上にわたる開発と実用化の積み重ねを経てローンチされました。その時点で、Wormholeはすでに400億ドル以上の資産を転送し、10億件を超えるメッセージを中継していました。公開後、開発はさらに加速し開発が加速し、累計取扱高は590億ドルに達して業界トップとなり、BlackRock、Apollo、Securitizeといった大手機関との統合も実現しています。
WはWormholeによって生まれながらにマルチチェーン対応のトークンとして設計され、現在はEthereum、Base、Solana、Arbitrum、Optimismの5つの主要ネットワークで、ガバナンスのために委任・ステーキングされています。間もなくWormholeガバナンスも始動します。これまでの成果を誇りに思うと同時に、これから広がる未来への期待はますます膨らんでいます。
Wormholeがこれから迎える市場チャンスは、計り知れないほど大きなものです。政府、機関投資家、政府系ファンド、企業、そしてAIエージェントを開発する企業までもが、次々とオンチェーンのプロダクトを立ち上げています。すでに数百のパブリックチェーンやプライベートチェーンが稼働しており、近い将来には数千におよぶ新しいチェーンやトークン化資産がオンチェーン化される見込みです。
オンチェーンでプロダクトを展開するあらゆるチームにとって、この巨大なチェーンと資産のエコシステムにアクセスすることは必須条件になりつつあります。伝統金融とクリプトの境界が曖昧になるなかで、Wormholeはその両者をつなぐ独自の立ち位置を築いており、今後流れ込む膨大な価値やデータの転送を担い、金融市場全体に広がる動きを取り込むことができる存在です。Wormholeは、人、機関、アプリ、資産、AIエージェント、そしてネットワークを結ぶインフラであり、それらすべてが収益化され、最終的にWのステーカーへと価値が還元されていく可能性を持っています。
この記事では、エコシステム全体を支えるWormholeプラットフォームとWトークンの今後の展望、そして過去1年間の成長と成果について簡単にまとめました。
Wormholeの未来:プラットフォームの収益化、プロダクトロードマップ、そして次の10倍の成長に向けて
次の10倍の成長、そしてその先の数十年に向けて
記事の冒頭でも触れたように、Wormholeはインターネット経済を繋ぎます。Wは、その未来を支えるユニバーサルなコネクティビティ・トークンとしての役割を準備しています。Wormhole Contributorsの目標は、今後1〜2年でメッセージと資産転送の規模を現在の10倍に拡大することです。
その実現に向け、Portalといったユーザー向けの主要プロダクトの改善に注力し、NTT、Settlement、Queriesといったスマートコントラクト系プロダクトでの競争力を高め、さらにWormholeならではのプロダクトとセキュリティの優位性を活用する機関グレードの資産を増やしていきます。ここで改めて、プロダクトロードマップのEra4フェーズについて整理します。
Wormholeプラットフォームの収益化、収益モデル、そしてフィースイッチ
Wormholeのリサーチチームは、Wormholeプラットフォームの主要コンポーネントにおいて、さまざまな収益化戦略やフィースイッチの仕組み、Wの収益モデルを検討してきました。これらは、ガバナンスに参加しステーキングを行うWホルダーに報酬として還元される可能性を持っています。Wormhole Contributorsは、構想段階から実装段階へと移行する準備が整っており、今後数カ月のうちに最初の大きなアップデートが予定されています。
プロダクトロードマップ
Wormholeは、2020年のローンチ以来、これまでに3つのプロダクト時代を経て、大きなアップグレードを重ねてきました。
Era1(2020〜2021)
SolanaとEthereumを結ぶ初のトークンブリッジを発表しました。このMVP版にはUIと、19のガーディアンによる初期セットが含まれていました。
Era2(2021〜2024)
プロダクト群を拡張し、開発者のためのプラットフォームへと進化しました。トークンブリッジの成功を土台に、30以上のブロックチェーン間でデータを転送できる任意メッセージ転送(arbitrary message passing)、ネイティブ・トークン・トランスファー、Wormhole Connect、Portalなどを次々とリリースしました。ガーディアンセットは19社の一流バリデータ企業に成長し、Uniswap、Pyth、Lidoといった著名なプロトコルが、ガバナンス、オラクル、資産移転などのユースケースにWormholeを活用しました。
Era3(2024年9月 Solana Breakpointで発表)
ネイティブスワップや高速転送、刷新されたSDK、Portal・Wormhole Connect・Wormholescanの再設計など、大幅なUXアップグレードを導入しました。また、グローバル企業や金融機関向けにカスタマイズされた「Wormhole for Institutions」を発表。Securitize、BlackRock、Apolloが導入し、今後さらに多くの機関連携が予定されています。
✨Era4(次のフェーズ)
マルチチェーンガバナンスによるさらなる分散化、Portalブランドの刷新、Wormhole上に構築された複数のIntentプロトコルの統合が進められます。具体的には以下のアップグレードが予定されています。
- MultiGov:業界初のマルチチェーン・ガバナンスソリューション
Ethereumメインネット、EVM L2、Solanaに対応する初のマルチチェーンガバナンスシステム。トークンホルダーは、対応する任意のチェーンでガバナンス提案を作成・投票・実行できます。TallyやScopeliftと協力して開発され、まもなくDAOとの連携が始まります。 - Wormholeガバナンスのローンチ
MultiGovを基盤とするWormholeガバナンスが間もなく始動します。Wトークンホルダーは、プラットフォームやコミュニティ、エコシステムに関わる重要な意思決定を提案・投票できるようになります。 - Wormhole Settlementのローンチ ✅
2025年2月にローンチされたWormhole Settlementは、次世代のIntentプロトコル群を導入し、大規模なマルチチェーン取引を迅速に処理可能にしました。開発者は高速なクロスチェーン・スワップを容易にアプリへ統合でき、スピード・セキュリティ・流動性を犠牲にすることなくシームレスなUXを実現します。 - Portalのアップグレードとブランド刷新
Portalのユーザー体験が大幅に向上し、新しいビジュアルアイデンティティとともにリリースされます。マルチチェーンのスワップや資産移転は、より速く、安く、直感的になります。 - コミュニティ向けインセンティブキャンペーン
Wステーカー、コミュニティメンバー、Wormholeエコシステムのユーザーを対象にした新たな報酬プログラムがまもなく開始されます。
この1年の振り返り:エコシステムにおける主な成果
🏦 機関投資家向けの標準的なインターオペラビリティ・ソリューションとして確立
- Securitize
Securitizeは、現在および将来のすべてのトークン化ファンドにマルチチェーンのインターオペラビリティ(相互運用性)を提供するため、独占的なパートナーとしてWormholeを採用しました。これにより、BlackRockやApolloなど大手が関わる機関投資家向け資産がEthereumやSolanaなどのネットワークを跨いで利用可能になります。 - BlackRock
BlackRockの19億ドル規模のBUIDLファンドは、Ethereum以外への投資家アクセスを広げるためにWormholeを採用。ファンドのトークン化資産を複数チェーンでネイティブに移動できるようにし、成長スピードをさらに加速させました。 - Apollo
運用資産7300億ドルのApolloは、同社の「Apollo Diversified Credit Securitize Fund(ACRED)」をAptos、Avalanche、Solanaといったネットワークに展開するためにWormholeを採用しました。これにより、安全かつシームレスなトークンブリッジが可能となり、オンチェーンのプライベートクレジット投資家に幅広いアクセスと選択肢を提供します。 - Flow Traders
上場企業であるFlow TradersがWormholeエコシステムに参加し、Wormhole Settlementのソルバーとして高速かつ低コストのマルチチェーン・スワップを支える技術を提供しています。 - Google Cloud
Google CloudがWormholeのガーディアンネットワークにバリデータとして参加。インフラを統合することで、Wormholeのセキュリティと分散化を強化しました。 - AMD
AMDは、ゼロ知識証明(ZK)の専門知識と高性能ハードウェアを提供し、プロトコルの信頼性と効率を高めるためにWormholeと提携しました。このパートナーシップは、セキュリティ、スケーラビリティ、そして「信頼不要性」の向上を目的としています。 - Borderless Wormhole Fund
Borderless Capitalが、Wormhole上に構築されるアプリを支援するため、5000万ドル規模のファンドを立ち上げました。
⚖️🪙 ステーブルコイン分野での展開
- MakerDAO / Sky
Sky(旧MakerDAO)は、2024年9月にWormholeのNTTフレームワークを統合し、Solana上でUSDSステーブルコインをローンチ。シームレスなマルチチェーン移転を可能にしました。 - Agora
2024年10月、AgoraはNTTフレームワークを採用。Ethereum、Avalanche、Suiなど複数チェーンにわたってAUSDステーブルコインの流動性を統合しました。 - M^0
2024年10月、M^0はNTTを組み込み、自社の$Mステーブルコインと、M^0のローンチパッド上で発行されるあらゆるステーブルコインをEthereum、Solana、Arbitrum、Optimism、Nobleなどに展開。M^0系ステーブルコイン同士のネイティブなマルチチェーン相互運用を実現し、発行規模の拡大を後押ししました。 - DeepBlue
2024年10月、DeepBlueの$DBUSDがNTTフレームワークを採用。マルチチェーン対応を実現しました。 - Transfero
ラテンアメリカ最大級のステーブルコイン発行者のひとつであるTransferoは、2024年11月にWormholeを独占的な相互運用プロバイダーとして選定。BRZ、ARZ、CLZといった自社のステーブルコインにNTTを導入し、流動性を統合。ラテンアメリカから世界までアクセスを拡大しました。
プロダクト
Era3 プロダクトラインの発表:2024年9月、Solana BreakpointにてWormhole財団の共同創業者Dan ReecerとRobinson Burkeyが、Era3のプロダクト群を発表しました。
- Mayanとの提携し、30以上のブロックチェーン間でIntentベースの資産スワップや転送をシームレスに実行可能にするWormhole Settlementを発表
- Portal、Wormhole Connect、WormholescanのUI/UX刷新と、Wormhole SDKの再設計
- Wormhole for Institutionsのローンチ:トークン化ファンドやステーブルコインなど、機関投資家向け資産に特化したカスタマイズ型ソリューションを提供。セキュリティ、コンプライアンス、技術要件に対応したハイレベルなサポートを実現。
ネットワークデータ
- 累計メッセージ処理数(業界1位):10億941万8376件
- 累計取扱高(業界1位):589億4658万6582ドル
インスティテューショナルイベント
Tokenize.NYC
2025年3月17日、ニューヨークのThe Times Centerで開催されたTokenize.NYCは、WormholeとSecuritizeが主催した重要な1日カンファレンスでした。伝統的な金融とブロックチェーン業界のリーダーが一堂に会し、教育、ネットワーキング、パートナーシップを通じて機関投資家によるブロックチェーン導入を促進しました。
イベントでは、実世界資産(RWA)のトークン化、DeFi、ステーブルコイン、ファンド運用、デジタル資産の未来といった主要テーマに焦点が当てられました。また、規制の明確化、機関導入の動向、革新的なブロックチェーンソリューションについて議論が行われ、トークン化資産が流動性・透明性・アクセス性を高め、金融をどのように変えているかについても注目すべき洞察が示されました。
Tokenize.NYCに参加した著名な企業・チームには、BlackRock、Apollo、Securitize、SkyBridge Capital、Solana、Ethena、Aave、JP Morgan、Goldman Sachs、Morgan Stanleyが含まれます。
まとめ
Wormhole Contributorsは、Wormholeが新しいインターネット経済をつなぐ基盤になると信じ、その実現に向けて全力で取り組んでいます。空港や鉄道、高速道路が世界中で人やモノを運ぶように、Wormholeはあらゆるブロックチェーン、アプリケーション、資産クラスをまたいで、価値とデータを安全に移動させる役割を果たします。
今後50年で、Wormholeは「価値のインターネット(the internet of value)」を築くための基盤インフラになるでしょう。そこでは、実世界資産、クリプト資産、資本市場、そして政府システムが自由かつ安全に相互運用されます。分断されたブロックチェーン経済圏がひとつのインターネット経済へと成熟していく中で、WormholeとWトークンは、世界中のあらゆるネットワーク、ユーザー、機関、そしてマシンの間で、毎日数十億件もの取引をつなぐ存在となるのです。
Wormhole情報
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