Ethereum Foundation、エコシステム開発支援体制を抜本刷新

Ethereumの成長にあわせて、Ethereum Foundationはエコシステムを支える仕組みを見直し、より多様な関係者との連携を進めていきます。

Ethereum Foundation、エコシステム開発支援体制を抜本刷新
Photo by Krystal Ng on Unsplash

イーサリアム財団(Ethereum Foundation)公式ブログ記事「The Future of Ecosystem Development at the EF」を日本語訳しました。


Ethereumは今、重要な転換点に立っています。Ethereumへの関心は、これまでの技術者や熱心な愛好家にとどまらず、実用的な解決策や具体的なメリットを求める企業、政府、そして一般の利用者にも広がっています。Ethereumのエコシステムは、こうした新たなニーズに応えるべく進化を続けています。Ethereum Foundationも、新たなかたちでその成長を支えていく覚悟を持っています。

Ethereum Foundationが最近発表したビジョン・ステートメントでは、次の2つの目標が掲げられています。

  1. Ethereumを直接的または間接的に利用する人の数を最大化し、その人々がEthereumの根本価値から恩恵を受けられるようにすること
  2. Ethereumの技術的・社会的インフラのレジリエンス(強靭性)を最大化すること

「Ecosystem Development(EcoDev)」とは、技術面ではなく、エコシステムや社会的な観点から目標達成を支えるチームのことを指します。EcoDevチームは、Ethereumの現実世界での利用におけるブロッカーを取り除き、人々がEthereumに参加しやすくする環境を整えます。また、世界中のEthereumコミュニティを支援し、助成金の提供を通じて各種の活動を後押しすることで、Ethereumが拡大していくなかでも、人間中心かつレジリエントなエコシステムであり続けられるよう尽力しています。

これらの目標をより効果的に達成するために、私たちはEcoDevの取り組みを大幅に拡充・再編し、4つの重点分野にフォーカスしていきます。

開発者・企業と共に、Ethereumの導入を加速

私たちは、Ethereumを活用したい開発者、起業家、企業と密に連携し、エコシステムの成長スピードを加速させたいと考えています。

この目的のため、以下の主要な導入パイプラインに沿ってインパクトを生み出す4つの新チームを立ち上げます。

  • エンタープライズ連携チーム:Ethereumを導入する企業向けに、明確な情報資源とガイダンスを提供します。
  • 開発者育成チーム:次世代のEthereum開発者に働きかけ、成長を支援します。
  • アプリ連携&リサーチチーム:ユーザーにとって有意義なEthereumアプリケーションの成長を後押しします。
  • ファウンダー支援チーム:資金以外の支援として、フィードバック、紹介、運営ノウハウ、メンタリングなどを提供します。

これらのチームには、すでに各分野で活動してきたEthereum Foundationメンバー(例:開発者育成担当のAustin Griffith)と、新たに加わるメンバーが所属し、多様なスキルと実行力を強化していきます。

EcoDevにおける加速の中核となるのは、既存のネットワークやコミュニティとの連携です。Ethereumには、L2、アクセラレーター、コミュニティイベント、ハッカソン主催者、投資家、教育者など、すでに起業家、開発者、アプリ開発チーム、企業を支援している個人や団体の広大なエコシステムが存在しています。

Ethereumの可能性を伝え、支える新たな取り組み

他のチームは、エコシステム加速の取り組みや、コミュニティによるEcoDev活動の成果をさらに広げていきます。

これらのチームは、エコシステムの成長状況を把握・分析し、戦略的な優先課題を支援するイベントの企画・実施を行います。また、さまざまなメディアを活用してEthereumの重要なストーリーを発信し、AIなどの新しいツールを用いて、私たちの活動全体をより効果的に進められるよう支援します。

この構成は、Ethereum Foundation内の既存チームを発展させたものであり、唯一の新設チームはEcoDev自動化チームです。

  • デジタル・スタジオ(旧 ethereum.org)チーム:Ethereumの可能性を語るナラティブ重視のコンテンツ、動画、出版物、ビジュアルなどを制作する、イノベーションとストーリーテリングの中核となるチームです。ethereum.orgはこのチームが手がけるプロジェクトのひとつにすぎません。
  • 戦略的イベントチーム:小規模な集まりから特化型の1日カンファレンスまで、目的に応じたイベントを設計します。
  • ローカル・エコシステム支援チーム(英語ではEthereum Everywhereチーム。まだ仮称です):アプリ開発者を支援するローカルコミュニティや拠点の拡大に特化します。
  • EcoDev自動化チーム:社内業務の自動化とAI活用によって、チーム全体の生産性と実行力を高めます。

なお、Devcon/nectはこれまで通り、DevconやDevconnectといったEthereumエコシステムにおける大規模年次イベントを担当しますが、新しいEcoDev体制には組み込まれず、引き続きマネジメントチームの直下で運営されます。

Ethereumを支えるプロジェクトへの継続的支援

Ethereumエコシステム全体のさまざまな取り組みに対して、資金面・非資金面の支援を調整するため、今後も以下3つの専任チームが活動を続けていきます。

  • ESP/助成金支援チーム:Ethereum Foundationの助成金プログラムは、今後大きな転換を迎え、よりターゲットを絞った申請受付と非資金的な支援に重点を置いていきます。このチームは、他のEthereum Foundationチームによる助成金提供の支援、申請内容のレビュー、助成先との関係構築などを担当します。
  • 戦略的資金提供イニシアチブチーム:Ethereum全体の発展に貢献する公共財的組織に対し、共同出資などを通じて支援を行います。
  • ローンチパッドチーム:Ethereum Foundationからのスピンアウトや助成先、その他のエコシステム関連団体が直面する、運営設計・持続可能な資金調達・ガバナンスなどの課題に対して支援を提供します。必要とされる組織に対し、実務的な支援を提供する役割を担います。

政策・学術と連携し、Ethereumの未来を築く

世界中でEthereumの採用を妨げるブロッカーを取り除くため、長期的な視点での取り組みも継続していきます。これらは以下のような複数の分野に分かれて進められます。

  • 政策連携(Policy Coordination):Ethereumエコシステムに関係する世界的な動向を継続的にモニタリングし、Ethereum Foundationが貢献できるリスクや機会を見極めたうえで、各国の政策団体と連携しながら、Ethereumにとって望ましい結果を導く支援を行います。
  • 制度連携(Institutional Secretariat):公共部門、多国間機関、NGOなどとの持続的な関係構築を担います。
  • 学術連携(Academic Secretariat):大学や研究者、学生との協力関係を深め、ブロックチェーン技術の発展を後押しします。

エコシステムがあってこそ

Ethereumが成長するにつれ、その成長を支え導いていくための取り組みは、ますますエコシステム全体の力が求められるようになっています。私たちEthereum Foundationも、その一端を担い、新たなかたちで貢献できることに大きな期待を抱いていますが、もちろん私たちだけで成し遂げられるものではありません。

すでに私たちは、Ethereumの成長を支えるさまざまなパートナー(組織、企業、スタートアップ、イベント主催者、コミュニティメンバー、投資家、開発者など)と密接に協力を進めています。関心のある方は、James Smithまでご連絡ください。

Ethereumのエコシステムは、常に変化し続けています。そして、私たちのエコシステム開発のアプローチも進化し続ける必要があります。私たちは常に、「今、誰も取り組んでいないことで、私たちだからこそ担える役割は何か?」を問い続けています。そして、他の人々や団体がより大きなインパクトを生み出せるよう支援することで、Ethereumのエコシステム全体が、時間をかけてよりレジリエントで持続可能なものへと成長していくことを目指しています。

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