才能のトライアングル

Shaanさん(@ShaanVP)のコラム「才能のトライアングル」について考えた。

才能のトライアングル
Photo by Akira Hojo on Unsplash

サンフランシスコ在住の起業家、@ShaanVPのによるコラム「triangle of talent(才能のトライアングル)」。海外クリプト界隈でも話題になっているので、ここで紹介する。


僕のメンタがかつて言った。

「マネージャとして最初の5年間は誰だってダメだ。でも、その後の15年もダメなままでいるかどうかは君次第だ。」

今日は、僕がマネージャとして何度も助けられた、小さなトライアングルについて話すことにする。僕はこれを「才能のトライアングル」と呼んでいる。

どんな組織にも才能の分布があり、それは次のように表せる。

右に行くほど”デキる人”

マネージャとして奇妙なことに気づいたのだが、業務時間の90%は、左側の問題のある社員か、真ん中の平凡な社員の対応に費やされる。しかし、会社にとって90%の価値を生み出しているのは、右側のスーパースター社員たちだ。

君が会社にいるなら、君自身がこの右側のプレイヤになりたいはずだ。
もし君が会社を経営しているなら、できる限り多くのスーパースター社員を揃えたいと思うだろう。

イーロン・マスクはかつて言った。
「どんな会社の成果も、そこにいる人々のベクトルの総和だ。」

理屈っぽい言葉がわかりにくいだろうか。つまり、彼が言っているのは、「会社とはチームだ。素晴らしいチームを作れ」ということだ。さて、導入はこれくらいにして、才能のトライアングルを紹介しよう。

才能のトライアングル

簡単に説明すると、

  • 肩書問わず、すべての社員は問題解決者であるべきだ
  • 問題解決には2つの要素がある:
    • 解決すべき正しい問題を特定する
    • それを自分で、または他の人と連携して解決する
  • スーパースター社員はトライアングルの頂点に位置している

シンプルに問おう。

君は日々、週次、月次、年次で、A+の問題を特定できているか?
その問題を、自分1人で、または他の人と協力して解決できているか?

ちなみに、多くの人々は仕事とは問題を解決することだと思っていて、それは半分だけ正しい。実際にもっと重要で影響力があるのは、”今、解決すべき問題は何か?”を的確に見極めることだ。

これがこのゲームの本質である。

CEOたち、君たちのチームにはレベル5のメンバが何人いる?

  • 創業初期(共同創業者だけ)の場合は、メンバ全員がレベル5であるべきだ。
  • 小規模チーム(5〜20人)なら、少なくとも30%がレベル5であるべきだ。
  • 中規模チーム(20〜150人)なら、目標は15%だ。
  • 大企業(150人以上)なら、5〜10%を目指す。しかし正直なところ、大企業なんて面白くないからやめた方がいい。

餅原自身は典型的な日本の大企業出身である。その後、外資系ベンチャ、外資系大企業、スタートアップを経験し、現在は独立して個人事業主、と経歴コレクタのようなことをしてきた。このコラムには概ね同意なのだが、ここからは私の考えを書いていきたいと思う。

  1. スタートアップ以外では、全員がレベル5だと成り立たない
  2. スーパースター社員は必ずしも優秀なマネージャにはならない
  3. 相性によってレベルは変動する
  4. 皆が求めるスーパースター・カメレオン

1. スタートアップ以外では、スーパースター社員以外もかなり重要

Shaanさんは「君が会社にいるなら、君自身がスーパースター社員になりたいだろう」と言っている。志は高く。これは素晴らしいモチベーションで社員の鑑なのだが、彼はまた、「創業初期ならメンバ全員がレベル5のスーパースター、小規模チームなら、少なくとも30%がレベル5であるべき」と言っている。つまり、スタートアップ以外では、全員がレベル5である必要はない。しかし、私はさらに大胆に「全員がレベル5であってはならない」と言い換えたい。

スーパースター・マネージャが活躍するには、非スーパースター・プレイヤが必要な場合が多い。スーパースター・マネージャとスーパースター・プレイヤは衝突しがちだからだ。組織の規模が大きくなるほど、「正しい問題を見極め解決する」ことは全員が持つべき資質ではないと言える。

スーパースターたちの意見が一致している間は良いが、合わなくなった時にどうなるかは、アベンジャーズが教えてくれたと思う。

2. マネージャにされて腐ってしまうスーパースター社員

仕事が出来る人間は昇進するのが会社の常(実際にはコネや社内政治などの面倒が付属するのだが)。しかし、すべてのスーパースター社員がマネージャに向いているわけではない。「めちゃくちゃスキルのあるプログラマが、マネージャになった途端チームクラッシャになった」というケースを見た技術系の人は多いのではないだろうか。スター社員の性格もあるのだが、なまじ自分が出来すぎるため、出来ないチームメンバのことを理解できず、期待をぶつけて押し潰してしまったり、フラストレーションを抱え込んで病んでしまったりする。

ちなみに昨今は日本でも増えてきていると聞くが、海外では”スキルはあるがマネジメントとチームプレイに向かないので、あえて放牧されている”一匹狼型のスーパースター社員をしばしば見かける。クリティカル・イシュー発生時に颯爽と現れ、火消しを行うスペシャル・タスクフォースのような存在だ。餅原の知っている緊急対策特別隊員はアセンブラを読みこなし、週末深夜の寝泊まり時にはコンピュータと対話していた。ほぼホラーである。

3. レベルは流動的だったりする

俺の言うことを黙って聞け系の優秀なレベル5: スーパースター・マネージャも存在する。このジャイアンがチームを率いる場合、メンバーはレベル2: 単純作業者で占めたほうが仕事の効率が良い。優秀な指揮官と素直な軍隊の要領だ。逆に、このチームで「僕は僕なりの方法で問題を解決する」などと言おうものなら、ジャイアンから「要らんことすんな!」とレベル1: 役立たずの称号を与えられてしまうだろう。

しかし、もし彼が別チームで羊飼い系マネージャの下についたら、のびのびと自由に発想力を発揮してレベル5: スーパースターの活躍をするかもしれない。スーパースター・プレイヤはジャイアンの元では伸びないのだ。

レベル5は優秀な人材だからどんな場でも最高の働きができるはず、というのは間違いだ。大企業で振るわなかった人がスタートアップで輝いたり、逆にスタートアップで失敗した人が大企業で高評価されたりするのは、こういった「場所と他者、両方との相性」が作用するからである。ある場所で自分が役立たずだと感じている人は、思い切って場所を変えてみるのもありかもしれない。ちなみに、やたらと自信を「右側のデキる人」だと主張するタイプもいるが、数字を交えた客観的な実績を言えないのなら、それは思い込みだ。

4. ダークホース: スーパースター・カメレオン

このトライアングルの中で最も希少種なのはレベル5: スーパースターだが、その中にはさらに貴重な存在がある。それがカメレオン型のスーパースターだ。彼らはレベル1からレベル5までを己の意思で行き来する。必要なら役立たずに甘んじるし、単純作業に没頭する。その実、自身で問題を見つけガンガン解決するスーパースターになることもできるのだ。

大抵の場合、出来る人が出来ない人を演じるのは難しい。スキル的な問題ではなく、心情的な問題だ。あなたは、もっといい問題解決方法を知っているのに、あえて効率の劣る方法で言われた通りに作業できるだろうか?これが難しいからこそ、スーパースター社員は己の優秀さを発揮できるより良い環境を求めて転職し、最終的に自分自身がボスになるケースが多い。しかし、中には飄々とどんな場面にも対応できる人がいる。この特性はほとんど変態(カメレオンだけに)だと思うのだが、当の本人は「与えられた条件の中で成果をマキシマイズするのは楽しい」というゲーム感覚だったりする。この特別天然記念物は、組織の規模に関係なく誰もが欲しい存在だ。

長々と書いてしまったが、この才能のトライアングルは「収入、影響力、自由」をトップとしたものであって、”優れた人間”の序列ではない。組織とそこにいる人々によって、必要な人材は異なる。著者のShaanさん自身は起業家であるため、起業家の資質ヒエラルキといえば正しいかもしれない。実際、私はレベル5に到達していない起業家に会ったことがないように思う。将来的に起業を目指すなら、このトライアングルはレベルアップの指標として大変有効だ。